2014(平成26)年に放送された『ウルトラマンギンガS』は前作『ウルトラマンギンガ』(2013)の2年後の世界を描いた続編である。

 北浦嗣巳プロデューサーにより抜擢されたメイン監督は坂本浩一。シリーズ構成は中野貴雄と小林雄次。防衛隊UPGの登場やもう一人のウルトラマン・ビクトリーの存在が特徴で、メインキャストも根岸拓哉と草川拓弥以外は一新された。製作面でも、ミニチュア特撮による街中での戦闘や遠征ロケの増加など、パワーアップした内容となっている。

 坂本監督はオープンセットでの撮影による巨大感の強調、デジタル合成による世界観の拡大、テンポの良いアクションシーンに特に力を入れたという。

 また、従来のシリーズでは、人間ドラマと怪獣特撮をいかに上手く絡めるか、という作家主義的側面ばかりに腐心する風潮があったが、シリーズを継続するには商戦で好成績を残していかなければならないため、ウルトラマンはもちろん、変身アイテムや武器などのグッズをいかに魅力的に見えるようにするか、という部分も意識している。

 ストーリー展開としては、前作では高校生の青春に主軸が置かれていたが、本作では主人公が防衛隊に入り大人の世界に踏み出しつつ、価値観の違いから簡単には分かり合えない相手・ショウとの関係性に主軸が置かれている。

 また、上司から駒のように扱われる敵役アンドロイド・ワンゼロのドラマも、組織と個人の関係を描いたひとつのテーマとなっている。因みに、終盤で登場するビクトリウム・キャノンを巡る展開は、福島第一原子力発電事故(2011)後の世相を反映したものとなっている。

 ウルトラマンビクトリーのデザインは後藤正行が担当。ギンガが未来を象徴しているので、ビクトリーは過去を象徴し、地底の戦士ということで黒を基調にし、額の形状や、ギンガではなかった腕・脚部の電飾など、挑戦的なデザインとなっている。また、ファイトスタイルも、ギンガがプロレス技やパンチ系が主体なのに対し、ビクトリーはキック技主体にし、差別化を図ったという。

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 『ギンガ』(2013)を発展させ、世界観を拡大したことにより、不動の人気を気付いた本作は、1年間に約2クール分の放送と劇場版を1本というフォーマットを定着させていく端緒となった。また、ギンガはその後続いていく「ニュージェネレーション」の1番手と位置づけられるようになり、『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(2019)ではニュージェネのリーダー的存在として描かれている。

cf.)前作『ウルトラマンギンガ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6129654.html

cf.)次作『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

[参考]
DVD『ウルトラマンギンガS』©円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンギンガS
『映画監督 坂本浩一 全仕事』著:坂本浩一 出版:KANZEN
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