『ウルトラマンマックス』(2005)第15話「第三番惑星の奇跡」は完全生命体イフが登場する三池崇史監督回。脚本はNAKA雅MURA。

街中に落ちてきた白い物体。DASHが焼き払おうと攻撃したら、同じ攻撃で反撃してきた。攻撃すればする程、その攻撃を吸収し強くなる。マックスの必殺技マクシウムカノンで一度は爆散するが再生、マクシウムカノンで反撃してきた。ミズキが盲目の少女・アッコのために守ろうとした公会堂も破壊されてしまう。

・防災頭巾をかぶって炎に包まれた街を泣きながら歩くアッコ。まるで空襲の後の焼け野原だ。戦争を想起させる絵作り。

・十字架が無数に存在する引きのカット。撮影では実際に火が使われており、子役もよく頑張ったなと思う。アッコを演じたのは佐々木麻緒。三池崇史監督の作品によく登場しており、監督から信頼される名子役。この回では涙をたくさん流し、実にいい表情をしている。舞台『おしん』(2008)ではおしん役を演じている。2012年以降、出演歴がないので引退したのではないかと思われる。

・イフの前でフルートを吹くアッコ。曲はショパンの練習曲作品10-3「別れの曲」。ここの佐々木麻緒の表情も絶妙。

・この回はミズキの回でもある。イフに一度向けた銃を下ろし、見つめるミズキ。
三池崇史監督の演技指導も熱がこもったシーン。「結論を出さないで」という監督のオーダーに対し、ミズキを演じた長谷部瞳もそれに応えている。因みに長谷部瞳は『ウルトラマンジード』(2017)で伊賀栗レイトの妻・伊賀栗ルミナ役を演じている。また、『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014)で野々村彩香役も演じた。CMに出演する旅に「あの美女は誰?」と問い合わせが殺到する「CM美女」と呼ばれていた。

・イフは楽器を身に纏い、マックスに誘導され宇宙へ。月の近くに光っているのはウルトラの星だろうか。もしウルトラの星だとすると、イフの行き先は宇宙の大海原ではなくウルトラの星なのかもしれない。因みに、イフの胸には小さなハートの意匠があしらわれている。

・「攻撃には攻撃。音楽には音楽か。世界は美しい。」ヒジカタ隊長の名台詞。

・DVDには特典映像としてもう一つの結末が収録されている。三池監督らしい遊び心で作られた。
アッコとミズキが乗ったダッシュアルファを落としてしまうマックス。そのあとイフの唸り声が。

 サブタイトルは『ウルトラセブン』(1967)第43話「第四惑星の悪夢」にインスパイアされたものだろうが、内容的にはあまり関係がない。内容でいえば、『セブン』第26話「超兵器R1号」が想起される。ギエロン星獣は強さを増すわけでないが、彼も再生怪獣だった。ダンの名台詞「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」は当時の米ソ間の軍拡競争が背景にあると言われているが、それは今も続き、日本も憎しみの連鎖からは脱却できていない。「すべての武器を楽器に」と言ったのは喜納昌吉だったが、今作はそれを体現した作品となった。涙なしでは観られない1話である。


cf.)『ウルトラマンマックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5997988.html

[参考]
DVD『ウルトラマンマックス』©2005円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/長谷部瞳
https://ja.wikipedia.org/wiki/佐々木麻緒
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