『ウルトラQ』(1966)第14話「東京氷河期」は2回目のペギラ登場回。脚本は山田正弘。監督は野長瀬三摩地。特技監督は川上景司。

・約150tもある旅客機・ボーイング707型機が空中で止まり、墜落!

・管制塔を横切る黒煙。これはまさか。

・羽田空港が氷漬け。「レーダー不能です!」「真冬になってしまったんです!」と連絡する管制官を演じるのは杉裕之。
『怪奇大作戦』(1968)第2話「人喰い蛾」で倉本役、第20話「殺人回路」で岡役を演じている。
インテリ風な髪型が印象的だ。

もう一人奥にいる管制官は伊藤実。第15話「カネゴンの繭」の銀行員役や第27話「206便消滅す」の管制官役でも出演している。
『ウルトラマン』(1966)第30話「まぼろしの雪山」の猟師役、第32話「果てしなき逆襲」の現場主任役、
『ウルトラセブン』(1967)第7話「宇宙囚人303」のハンター木村役、第31話「悪魔の住む花」の高田医師役、
『帰ってきたウルトラマン』(1971)第4話「必殺!流星キック」の警察官役も演じている。


・日曜版のネタを探す由利子は上野駅に来ていた。
一緒にいる秀山記者を演じるのは野本礼三。『ウルトラマン』(1966)第13話「オイルSOS」でタンクローリー運転手役も演じている。2006年に亡くなっている。享年75歳。

・「僕にはただ死ぬためにだけ集まってくるアリのように見える」というリルケの台詞を用い、「東京は苦い砂糖なのよ」と語る由利子。塀から落ちた由利子を笑う少年・沢村治夫。蒸発した父の捜索記事を書いてもらう為、毎日新報を探しているという。

・一方、星川航空ではセスナには見知らぬ男が乗り込んで眠っていた。どうやら酔っ払いのようだ。季節労務手帳を発見。農閑期に都会に働きに出る季節労働者らしい。


・大寒波の原因を追って、南極探検の経験がある万城目を訪ねる由利子。万城目はペギラの仕業ではないかと推測する。

・デスクに一旦ペギラ説を否定され、治夫少年の取材にあたる由利子。父の名前は沢村照男。元ゼロ戦のパイロットで、今は出稼ぎ労働者。

・ペギラ出現!窓ガラスの割れ方とそこから覗く由利子の構図が最高に良い。


・百貨店ビルを粉砕するペギラ。大迫力の破壊シーンだ。このときの泣き声は『大怪獣バラン(1958)』の流用。

スーツアクターは清野幸弘。クレジットは弘幸となっているが、誤り。
清野幸弘は『ウルトラマン』(1966)ではチャンドラー、ドドンゴ、ペスター、再生テレスドンを演じた。中でもペスターは、一緒に着ぐるみに入った荒垣輝雄と共に、特撮プール内で大量の弾着を浴び、火の海ともいうべき状況で撮影。死ぬ思いだったそうだ。

南極が原発事故で温暖化してしまったため、北極へ移動をする途中、東京で休憩しに来たと推測されている。この件にも原発が一枚噛んでいる。


・冷凍ガスで車ごと宙に舞ったが、なんとか助かった由利子たち。わずかに開いた車のドアから治夫少年を出し、星川航空へ急がせる。

・途中、治夫少年はペギラに襲われてしまう。ペギラとの合成カットや雪の坂に滑り落ちる特撮もインパクトがある。

・眠っていた男は沢村照男。銃と(盗んだ?)宝石を持っていた。ペギミンHでペギラを追い払う作戦にセスナを使わなければならないのに、沢村は銃で脅しながらセスナを逃亡に使おうとする。「あんな東京なんか一回氷詰めになって、消毒された方が住みよくなるぜ」

しかし、突如星川航空に現れた自分の息子・治夫と運命の再会を果たすこととなる。治夫は寒さで瀕死の状態。それを見た沢村は万城目に治夫を預ける。態度の変わり様が凄い。


・「見ろ!あの空を。この天候で飛べるのは俺だけだ」暗雲たれこめる空を指差す沢村。まるでこの先の死を暗示するかのようだ。
沢村照男を演じるのは有馬昌彦。
『ウルトラマンレオ』(1974)第32話「日本名作民話シリーズ!さようならかぐや姫」で弥生の父親役も演じている。
特撮や時代劇への出演が多い。1991年に膵臓癌で亡くなっている。享年66歳。

・セスナ内部からの合成カット。眼玉の裏から黒目を描いているため、光の加減や角度で黒目が光に溶けて白目がちになるペギラの形相が凄まじい。

・「治夫・・・」とつぶやき、ペギラに正面衝突をする沢村照男。ペギミンHは見事爆発した。ミサイルでもびくともしなかったペギラだが、この特攻により、耐えかねて東京を飛び去る。


・去り際にも黒煙を撒き散らすペギラ。まるで原爆の煙のようだ。「自分なりのゴジラを撮りたい」という想いだった野長瀬三摩地。ゴジラも原爆が原因だったため、ペギラにも原爆を連想させる要素を採り入れたと思われる。

・電車で万城目一行に笑顔でさよならを言う治夫。

・その隣の席には父の遺骨が。


・ほぼ無表情で遺骨を見つめる治夫。だが一瞬、泣きたいのを堪えるような表情を見せる。この匙加減がたまらない。
沢村治夫少年を演じたのは佐藤英明。脚本の山田正弘お気に入りの名子役である。
『ウルトラマン』(1966)第9話「電光石火作戦」で少年キャンプ団の一員も演じている。


 「自分なりのゴジラ」を追究した野長瀬三摩地監督がもう一度ペギラを使って描いた渾身の1話。製作順も後半期のため、特撮スタッフの技術が確立されつつあり、なかなか見応えがある。大都市の破壊が映画のスクリーンではなく、テレビのブラウン管で行われるため、アップを意図的に多用したカットが多いのも特徴だ。

 東京を雪で覆うということを説得力ある特撮映像として、しかも映画ではなくテレビで見せているところが素晴らしい。

 原発、黒煙、ミサイル、ゼロ戦、特攻・・・と「戦争の傷跡」を忘れまいとするピースが散りばめられている。歯科医・小林晋一郎が「微睡の客」と称したペギラだが、繁栄を謳歌する東京の象徴・百貨店ビルを豪快に破壊する様は、行き過ぎた成長主義への警鐘のようにも見える。かつてはゼロ戦パイロット(ゼロ戦パイロットといえばなかなかなれない。操縦士の中ではエリート中のエリート扱い)だったが季節労働者になり悪事に手を染め落ちぶれた父親が出てくる点も「格差の告発」という点で見逃せない。実際、高度成長期には自分を見失い蒸発する父親が多かったという。「蒸発」に関しては最終話の「あけてくれ!」の方でもクローズアップされている。

 因みに、この「東京氷河期」の放送は航空機事故の影響で2度も延期となっている。

cf.)延期の詳細についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6366088.html

cf.)『ウルトラQ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6654971.html

cf.)ペギラ初登場回「ペギラが来た!」はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6605555.html

cf.)ペギラ登場の『ウルトラマンゼット』第5話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6593557.html


[参考]
DVD『ウルトラQ』©1966円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラQ
https://ja.wikipedia.org/wiki/杉裕之
https://ja.wikipedia.org/wiki/伊藤実
https://ja.wikipedia.org/wiki/野本礼三
https://ja.wikipedia.org/wiki/清野幸弘
https://ja.wikipedia.org/wiki/有馬昌彦
https://seesaawiki.jp/w/ebatan/d/%a5%da%a5%ae%a5%e9

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